陽炎(かげろう)

陽炎(かげろう) 光・炎・夜・闇などの色言葉一覧

陽炎について

陽炎とは地面から炎のように空気が上がってくる事

陽炎とは、風が穏やかで天気が良く晴れた日に、道路や線路から炎のように空気がゆらめいて立ち上る現象のことです。
地面の上の空気の温度や密度にむらが生じることで、不規則に光が屈折することで発生します。
また明け方の東の空にちらりと昇る光も指します。

似た現象に「逃げ水」がありますが、これは日差しが強く暑い日に地面付近で起きます。
陽炎と同じく空気が揺らめいて起こる「蜃気楼」ですが、逃げ水は遠くに水たまりが見え、遠くの景色が映り込んで見える点が違います。
陽炎と逃げ水は春以外でも起きる現象ですが、両方とも晩春の季語です。

陽炎は古くは「かぎろひ」といい、はかないものやほのかにみえるもの、または明け方の空にほのかに見える光を意味し、奈良時代から存在します。
日本最古の歌集である万葉集には「かぎろひ」が使われた和歌がいくつかありますが、柿本人麻呂が詠んだ「東の野にかぎろひの立つ見えてかへり見すれば月かたぶきぬ」などが有名です。
これは持統天皇6年(692)11月17日に、柿本人麻呂が軽皇子について奈良県宇陀市阿騎野へ狩りに出かけた時に詠んだ歌で、東の空に夜明けの光(かぎろひ)が立ち上がるのを見ていて、ふと振り返ると西の空に月が傾いて沈もうとしている」という意味です。

平安時代になると「陽炎」という漢字ができましたが、この頃は「ようえん」と呼んでいたらしく、「陽炎」を「かげろう」と呼ぶようになったのは江戸時代になってからとされます。
江戸以前は「野馬(やば)」を「かげろう」と呼ぶことも多かったらしく、野生の馬が砂塵を巻き上げながら春の野を駆けていく様子を「かげろう」に見立てたそうです。
これは古代中国の思想家・荘子が書いた「逍遙遊(しょうようゆう)篇」の「野馬也、塵埃也、生物之以息相吹也。」に由来します。
「野馬(陽炎)がゆらめき、砂埃(塵埃)が舞い上がり、多くの生物が息を吹きかけ合うようにして生きている」という意味です。