夜陰(やいん)

夜陰(やいん) 光・炎・夜・闇などの色言葉一覧

夜陰について

夜陰とは夜の闇や夜の暗さの事

夜陰とは、夜の闇、夜の暗さ、または夜中を指す言葉です。
「夜」という言葉だけで十分暗さを表現できるはずですが、さらに「陰」という言葉も追加し、夜の闇の深さ、暗さや静けさをより強く表現しています。

平安初期に編纂された勅撰和歌集「経国集」には「玉匣地深朝気徹、金台水冷夜陰甲」という一節があります。
「鏡が収められた美しい箱(玉匣)は深く朝の清らかな気が透き通っている、金で飾られた台座は水のように冷たく、夜の暗闇(夜陰)でも、磨かれた鏡の表面(甲)は輝いている」という意味です。

夏目漱石は「こころ」には、「玄関と門の間にあるこんもりした木犀(もくせい)の一株(ひとかぶ)が、私の行手(ゆくて)を塞(ふさ)ぐように、夜陰(やいん)のうちに枝を張っていた。」という一節がありますが、「夜陰」と「行手を塞ぐ枝」が主人公の将来を暗示しているようです。
また「幻影の盾」では「外の方では気が急くか、厚い樫の扉を拳にて会釈なく夜陰に響けと叩く」という一節があり、灯りの無い闇の中で戸を叩く音だけが響く情景を「夜陰」という言葉が強調しているようです。